この夢はどんな時も笑っているよ

某所でホームレスなど生活困窮者の支援をしている人間のブログ。

あるアル中のホームレス

病院に入院している元ホームレスのお見舞いに行った。まだ家はないんだけど、彼がステップアップしてくれることを願って、元ホームレスとした。

 

長年公園で生活していて、常に酒を飲んでいる人だった。他のホームレス連中からも、あいつは・・・と言われるぐらいに。現在、生活困窮者支援法と言う法律があり、ホームレスがその公園などに居ても、出て行けと行政は言えないことになっているのだけど、それでも公園だから、日中は他の利用者がいる。そこで朝6時ぐらいに起きて、因る前帰ってこない様に伝えてあった。だけどそのホームレスは、どこでも酒を飲む。モールのフードコートでも、パチンコ店の休憩スペースでも。ペットボトルに日本酒を入れて常に持ち歩いている(周りは水だと思うから、店に入ってもばれない)。

 

こう言う場合、基本的に、生活保護費を支給する福祉事務所は、支援を許可しない。国民の血税で賄われる生活保護費が、酒代にすべて消えるのは目に見えているから。だから支援には抗酒剤投与の承諾が必要となる。しかし抗酒剤は、アルコールに弱い体質を一時的に作る物だから、抗酒剤が効いている段階で酒を飲むと急性アルコール中毒になり、最悪死んでしまう。その様な危険を伴う薬を飲むわけだから、本人の真摯な同意がない限り、僕らも抗酒剤を飲ませない。

 

しかしこのホームレスさん、酒を辞めようと思えば辞められるんだよと言いながら、抗酒剤を拒否し続けた。だからずっと公園に住んでもらうことにしていた。

 

そんな時、ウチの団体に消防署から電話が入る。その人がコンビニエンスストアで転倒し、額を切って救急搬送の要請があったとのこと。僕も搬送された病院に駆けつけ、診察の結果を聞く。すると熱があり、インフルエンザの疑いもあるとの事。

 

あーインフルの時に酒を飲んだから、アルコールが回りすぎで、足元がふらついたのね。

 

精密検査の結果、インフルエンザと診断され、4日間入院。でもこれは彼にとって転機だった。なぜなら4日間病院に入院し、酒を飲まなかったので、久しぶりに素面になれたから。ここで福祉事務所の職員とウチの団体の代表が病室に駆けつけ、アルコール依存治療を受けるよう強く説得。途中、怒鳴り合う場面もあったらしいが、結局そのホームレスも、治療を承諾した。

 

彼は今年後半になって、明らかに体力が落ちていた。彼が寝食していた公園はトイレがないのだが、昔は近くのコンビニ等で用を足していたのだが、最近、寝床のそばに箱を置き、そこで用をたすようになり、公園利用者から苦情が出てるようになっていた。

 

もう潮時だ。彼もうすうす自覚をしていたのだろう。

 

入院前の検査にも同行し、待ち時間、そのホームレスと話をした。最終学歴は大卒、新卒で証券会社に就職した。ホームレスは学歴が低い人も多いので(特に多いのは、昔、中学を卒業し集団就労で東京に出てきた人。ALWAYS3丁目の夕日の堀北真希みたいな人ですね)、これには少し驚いた。そういえば常に丁寧語でしゃべる方だし、字もきれいだったな。

 

しかし、バブル崩壊とともに給与が下がり、それが理由で離婚。その頃から酒におぼれ始め、仕事も辞め、酒に溺れる羽目に。

 

路上生活状態は10年ぐらい続いたが、ついに年貢の納め時が来たと理解したのだろう。

 

その後、禁酒治療を行うために、専門の病院へ入院した。肝機能が相当弱っており、長期戦になるとのこと。当然入院中は酒を飲めないから、禁断症状とも長期間戦うことを意味している。

 

彼は今必死になって戦っている。僕も仕事や私生活で辛いことがあってもくじけないでいようと思う。